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出産や死が遠ざけられた現代社会佐藤達全先生 (育英短期大学名誉教授)講師仏教保育で大切にしたいこと令和6年度第2回仏教保育研修会生命尊重の5つの視点令和7年1月27日/東京プリンスホテルじたけ教職の仕事に46年間就いておりましたが、ここ30年間ほどの日仏保との関わりや、大学で担当してきた仏教保育の講義などを通して、「仏教保育は素晴らしい」と思う気持ちが強くなりました。今の時代、ますます世界に広めていくべき教育のあり方ではないかと考えています。昨年末には、日仏保の『月刊仏教保育カリキュラム』に掲載された約3年分の原稿をまとめた『仏教保育のこころ-食育・ことば・いのち-』という書籍が発刊されました。また、昨年3月、それまでに私が書いた仏教や保育に関係するとしての仏教保育を考える-これからの日本人に不可欠な生命尊重の心を育てるために-』(上毛新聞社出版編集部刊)と4目次令和7年4月1日発行   いう論文集を出しました。それらの中にも書いてありますが、保育の原点は「子どもの『いのち』を守り、その『いのち』を育てていくこと」です。その原点のもと、いかにして子どもたちを育てていくのか。そこが、将来にわたって、保育に関わる私たちに課せられている大切な仕事ではないかと思います。2年前、曹洞宗総合研究センター学術大会において「現代日本における生命尊重教育の必要性」と題する発表をしました。幼児期の生活体験は、子どもの人格や生活習慣の形成に非常に大きな影響を与えます。中でも、幼児期に「いのちを大切にする心」を育むことは特に重要だと考えています。なぜなら、いのちは誰にも一つしかない、一度失ったら二度と取り返すことができないものだからです。しかも「生命尊重」とは、生物的な意味だけでなく「生き方」にもつながっていることを忘れてはなりません。生命尊重というと、①他者の生命②自分の生命③動物や植物の生命を奪ったり傷つけたりしないことだと考えられますが、滋賀大学教授の藤ふし武先生は、これを「消極的な生命尊重」だと指摘しました。一方「積極的な生命尊重」には、④自分の特性を最高に発揮しようという視点⑤(保育者として)子どもの可能性を十分に伸ばそうという視点が含まれると私は考えています。誰のいのちも地球上に一つしかなく、いつか必ず終わりが来ます。それゆえ、5つの視点からなる「積極的な生命尊重」までしっかり考えて子どもを育てていくことが大事ではないかと思うのです。ところが現実は、簡単に自分や自分以外の生命を傷つけたり死に至らしめたりする事件があまりに多く、「死」の存在が忘れられているのではないかとさえ思えてきます。そのように考える理由の一つに、「人間が死んでも生き返ると考える小中学生がかなり存在する」という調査結果があります。20年ほど前に医師で元日本女子大学教授の中村博志先生が行った調査では、「死んだ人は生き返らない」と答えた小学4〜6年生は3分の1だけで、「生き返る」や「分からない」という答えが3分の2を占めました。中学生では、その比率は半々だったそうです。このような状況に対して、京都大学名誉教授で社会思想家の佐伯啓思先生の『死にかた論』(新潮社刊)という本が4年前に出版されました。その中で「近代文明は生の充実・拡大にまい進し、生きることしか考えずに死を思考から排除し、死生観や自然観を見失ってしまった」と指摘されています。死というのは嫌なことで、なるべく考えたくない。でも、いくら意識から排除しても、死はやはり不可避なものです。2025-第729号-講師 佐藤 達全 先生(育英短期大学名誉教授)令和6年度 第2回仏教保育研修会 …………………………………… 1〜3佐藤達全先生 書籍紹介 ……………………………………………………… 3関西地区連絡協議会開催報告 ……………………………………………… 4茨城県仏教保育協会研修会報告 …………………………………………… 4令和7年度 収支予算 …………………………………… 5〜6協賛広告 花まつり…………………………………………… 7コラム/編集後記 …………………………………………… 8(1)第729号50本近くの論文をまとめた『保育の原点

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