鶴見大学短期大学部教授鶴見大学仏教文化研究所副所長 仏教保育って どんな保育?橋本弘道先生 石丸先生は、最初から最後まで、合間に説明を挟みながらリトミックのレッスンを行い、受講生は90分間ランダムにさまざまなリトミックのエッセンスを体験しました。高い音、低い音、速い音、遅い音、強い音、弱い音……。次にどんな音が来るか予想がつかない中で、受講生はピアノの音に合わせて瞬時に身体を動かしていきます。「先生が『大事な話だからよく聞いて』と言っても、子どもはそこまでは聞いていても、その先は聞いていません。子どもが『聴く』ことができるのは、自分が動いている時です。何だろう、やってみたいという意欲を引き立たせる方向にもっていくと、『聴く』ことができるようになってきます。それを身につけさせると、先生がすごく楽になると思います。それから、動く時には体幹を考えること。遊びの中で体幹をしっかりさせることも、私がとても大事にしていることです」リトミックでは、メロディを奏でるというよりも、身体の表現を導く感覚的な音を出していきます。「実は、あまりピアノが得意じゃない人の方がリトミックに向いているんです。なぜかというと、ピアノが上手な人は、ついつい曲を弾いてしまうから。もっとシンプルに。その方が音をピアノを弾くのではなくて、聞き分ける力がつきます」音楽教育の中でも、歌や踊りを覚える時と違って、失敗から考えることを学んだり、お互いに譲り合うことで社会性を学んだりしやすいことも、リトミックの特徴の一つです。「うまくいくと理屈が分からないけど、一度失敗すると、そこから学べる。一つできるようになったら、それでおしまいにしないで、どこかを変えて繰り返し使えますよね。こうじゃなきゃと決めないで、子どもに合わせていろいろ発展させていくといいと思います。注意力がついて聴く力が伸びてくるので、ぜひそういう楽しい遊びをみんなでたくさんやってください」橋本先生は、ご専門は教育ですが、人間科学、教育学、経営学で修士の学位を取得し、最終的に経営学で博士号を取られるなど幅広い知識をお持ちです。講義は宗教の概要から始まって、お釈迦さまが説いた仏教、日本人の宗教観、仏教保育とはどのような保育か、未来の世界、と多岐にわたる内容でした。映像なども交えて分かりやすく説明されました。「結論から先に示すと、仏教保育は『幸せになるための保育』だと、私は定義しています。私も幸せ、あなたも幸せ、みんな幸せ、の保育が仏教保育だということです」。この論点で、橋本先生は『月刊仏教保育カリキュラム』において半年間(2021年10月号〜2022年3月号)連載されていますので、詳細はバックナンバーにてご参照いただけます。まずは宗教についてのお話から。キリスト教、イスラム教、仏教は世界三大宗教とされていますが、一神教である他の2宗教に対し、仏教は基本的には神様を想定しないという考え方であるという点で大きな違いがあります。仏教徒は世界人口の6%くらいです。「日本人に尋ねると、8割くらいの人が『自分は無宗教』だと答えます。でも、日本にあるお寺の数はコンビニより多いと言われているんですよ」。さらに、日本には神仏習合の長い歴史があり、これが独自の宗教文化を生みました。「仏教はお釈迦さまが説いた宗教です。お釈迦さまは人生を苦しみだと捉え、そこから永遠に離れるためにはどうしたらいいかを考えました。そうすると、苦しみの反対である『幸せ』や『幸福』を目指すのが仏教だと言ってよいのではないでしょうか。あるいは心身ともに満たされた状態を表す『ウェルビーイング』と言ってもいいかもしれません」自分(自分の中にある仏の部分:仏性)を頼りに生きていきなさいと、お釈迦さまは最後第722号(6)90分という限られた時間の中で、
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