-第722号-少子化は雇用・労働の問題保育は「質」の面で少子化対策に貢献― ”保育“の質と役割を機能から捉え直す―「超少子社会の到来と園の持続可能性9 令和6年度第1回仏教保育研修会 講師 吉田正幸氏 (保育システム研究所代表)令和6年6月17日/大本山増上寺・光摂殿昨年4月、こども家庭庁が誕生し、こども基本法が施行されました。それから約1年が経ち、6月初旬に国会でさまざまな子ども関連の法案が一括で成立しました。これから数年の間に起きる動きの中で、現場の保育に影響するところをかいつまんで説明いたしますので、今後の園のあり方を考えるヒントにしていただければと思います。まず少子化をおさらいしておきましょう。第二次ベビーブーム以降はとにかく生まれる子どもの数が減り続けています。1971年からの4年間で800万人が生まれ、この第二次ベビーブームの世代が親になってたくさん子どもを生むはずだったのですが、むしろ下り坂になっていきました。親の数がこれから激減していくので、たとえ合計特殊出生率が上がっても、子どもの数は当面増えないという厳しい状況です。厚生労働省の人口動態統計によると、昨年の合計特殊出生率は1・20で、出生数は前年から4万3千人減の72万7千人となっています。今年の出生数は、せん。このように、少子化の最大の要因は、子どもを育てる全体の人口が絶対的に減っていることです。これは政策の打ちようがないので、対策の対象になりません。二つ目の要因が未婚化・非婚化の進行です。日本では婚外子はわずか数%ですから、結婚しないと子どもが増えないにも関わらず、結婚する人が減り続けています。三つ目の要因は晩婚化・晩産化です。この約40年間で女性の平均初婚年齢は4・3歳上がり、第1子を産む出産平均年齢は4・5歳上がって31歳くらいです。その後子どもを3人、4人と出産するのはなかなか難しい。これが、実は少子化の本質になっています。このような状況となっている決定的な要因は、経済の問題です。結婚して家庭生活を営むためには、ある程度安定した未来を見据える必要があります。しかし、例えば非正規雇用の男性は30歳前半で1割強しか結婚できていません。これを改善するのは、若い人たちの収入を増やす、安定的な仕事を増やすという雇用政策や労働政策であって、保育や子育て支援の問題ではないわけです。こうした若い人たちの働き方の問題に30年前から取り組んでいれば少し状況は違ったかもしれませんが、むしろ格差社会が広がってきたというのが現状だと思います。少子化対策というと、どうしても子どもの数を増やしたいと考えます。しかし、たとえ数がそんなに増えなくても、一人ひとりの子どもが健やかに、心豊かに、たくましく育ち、小中高校を通じて学びを深め、社会に保育システム研究所代表(1)第722号2024.September吉田正幸氏70万人を切っているかもしれま
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