乳児の肌とアレルギー予防子どもの発達において食物アレルギーは大きな心配事のひとつです。しかし、離乳食開始を遅らせるなどして原因になりやすい食品の摂取を避けることは勧められません。むしろ摂取開始の遅れが発症リスクになるとされています。近年、湿疹やアトピー性皮膚炎のある子どもは、「皮膚からの感か作さ」により食物アレルギーを発症するリスクが高いことが分かってきました。『食物アレルギー診療ガイドライン2021』(日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会)においても、アトピー性皮膚炎や皮膚のバリア機能低下が、小児期の食物アレルギー発症に影響する因子として挙げられています。これには「湿疹などでバリア機能が低下した皮膚から環境中のアレルゲン(食物やダニなど)が体の中に入り、抗体をつくる仕組み」(=経皮感作)が関わっていると考えられます。「感作」とは、本来は体に害を与えない物質を異物と判断してしまうこと。何らかの炎症やダメージがある体の部位と食物が出会うと、その食物を悪いものと勘違いし、感作が起こるとされています。そして、小児期に最も重要なのが皮膚の炎症やダメージだということが分かってきました。つまり、湿疹などのある皮膚に食物のかけらが触れることで感作され、のちに実際にその食物を食べた時に異物と判断されてアレルギー症状が出てしまうのです。このため、乳児に湿疹や肌荒れがあれば、皮膚を清潔に保って保湿ケアを行い、早めに治療を開始することでアレルギーの予防につながる可能性があります。例えば、湿疹の治療を行い、生後6か月頃から卵の摂取を開始することで、その後の卵アレルギーを抑制できることが国立成育医療研究センターの研究グループにより報告されています。乳児の肌荒れには十分注意して、「皮膚からの感作」を減らし、適切な時期に離乳食を始めるようにしましょう。今年は梅雨入りが全国的に遅れていました。梅雨の時期に雨量が少なくなると暑い夏に向けて水不足が心配されます。だいぶ前に私が雨の中、傘をさして道を歩いていると、近所の人から「今日はいい雨ですね」と挨拶されてびっくりしたことがあります。その方に「雨が降ったら濡れてしまって困るのにどうしていい雨なのですか?」と尋ねたら、その方は「私は農家で野菜や果物を育てているので、雨が降らないと野菜たちがうまく育たないので困るのよ。それにお天気のことを悪いとは言わないのよ」と言われました。雨は自然と降るものです。一気にたくさん降ると困ることも起こりますが、「恵みの雨」というように植物や生き物にとって成長には欠かせないものであり、雨が降ることは自然界にとっても私たちにとっても、とても大切なことです。雨の日は外遊びができないので、どうしても室内での保育になりがちですが雨の日にしかできない遊びを取り入れこともできるのではないでしょうか。長靴を履いて水たまりの中をバシャバシャと歩いたり、傘にあたる雨の音に耳を傾けたり、レインコートを着て雨を体で感じることも楽しいかもしれません。晴れの日とは違う雨の音やにおい、景色の違いを探すのも新しい発見につながるのではないでしょうか。 (桑田)7/1 「仏カリ」「仏教保育」編集会議事務局会議7/22 第90回夏期仏教保育講習会参考文献: 一般社団法人日本小児アレルギー学会食物アレルギー委員会.アレルギーガイドライン2021 ダイジェスト版 第6章「リスク因子と予防」. 2022.6.7.https://www.jspaci.jp/guide2021/jgfa2021_6.html国立研究開発法人国立成育医療研究センター. 離乳食における鶏卵摂取の考え方 ~鶏卵アレルギー予防のために~.2023.10.12.https://www.ncchd.go.jp/hospital/about/section/allergy/keiran_sessyu.htmlん第721号(8)事務局日誌 7 / 25 ・ 26 第37回全国仏教保育埼玉大会
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