202404
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仏教保育と子育て支援これからの「最善の利益」で分けることなく、その原理を尊重しなければならないということになっています。ところで、児童の権利条約が出てきたときに、「子ども」の権利条約としてはどうかという意見があったんですね。この頃、国は「『子ども』という言葉は法律用語になじまない」としていました。今は法律にもなっていますし、行政もよく使っています。社会の変化というのは大きいものです。そういえば、かつて左利きの子どもは右利きに矯正するということがありましたが、今はそういうことはなくなりましたね。です。教育基本法には、「宗教に関する寛容の態度、宗教に関する一般的な教養及び宗教の社会生活における地位は、教育上尊重されなければならない」とあります。そして、国公立の学校では「特定の宗教のための宗教教育その他宗教的活動をしてはならない」とされています。ということは、私立の園では宗教教育を行うことが認められているわけです。しかも、今は幼稚園だけでなく保育園も親が選んで子どもを入園させられますね。その意味で、仏保園は「選ばれている」と胸を張っていいと思います。教育ということでキリスト教と神社神道を挙げておきました。仏教については、本全体を通して学んでいただければと思います。教保育」です。幼稚園は幼稚園教育要領に、保育所は保育所保育指針、こども園は幼保連携型認定こども園教育・保育要領に、保育の内容が示されています。その中で5領域というものがあり、それぞれに「ねらい」と「内容」があります。また、保育においては養護と教育が一体的に行われるものであり、養護とは「生命の保持」と「情緒の安定」だとされています。このような養護の説明は、数年前から記されるようになりました。それから、要領・指針は必ずやらなければいけないものばかりではあり次の項目は「宗教教育と仏教保育」レジュメにあるように、本には宗教3つ目の項目は、「保育の内容と仏ません。「必須」「努力」「尊重」「選択」の4つに分けることができますので、各園で改めてその中身を考えていただけたらと思います。4つ目は「子育て支援と仏保園」です。いま「子育て支援」という制度や取り組みがあちこちで注目され始めています。子ども個人の成長・発達を考えるとき、環境と個人との相互関係によって子どもは成長していくという視点が大切です。子どもが育つ環境には十二分な配慮をしないといけません。子どもの置かれる環境は多様化・複雑化しており、スクールソーシャルワークの次に必要なのは、保育ソーシャルワークだろうと思います。保育者は、これから相談支援をやっていかないといけない。また、仏保園等も地域全体の子育て支援の役割を期待されています。地域のつながりがなくなってきている中で、地域と結びついた仏保園には、今後その役割を大いに果たすことが求められています。国や地方自治体では地域共生社会の実現に向けた取り組みを行っており、そのために仏保園の果たす役割も大きくなっていくのではないかと思います。5つ目は「持続可能な開発目標(SDGs)」です。ここでは17の目標と5項目の基本原則を挙げています。より具体的には第10講に書かれている内容をご覧ください。最後の6つ目は「児童の権利条約と保育実践」です。児童の権利条約には子どもが権利の主体であると謳われており、日本でも「子どもの声を聞きましょう」ということで、子どもの意見を直接聞くためのアンケート調査が行われたり、子どもが意見を言えるような場が設けられたりする機会が増えてきました。また、「子どもの最善の利益を目指していきましょう」という点については、多様化する社会の中で、親の離婚・再婚、同性婚、養子、体外受精など、複雑な問題に対する議論が進んでいません。これからの時代において、子どもにとっての最善の利益とは何なのでしょうか。加えて、本には、保育士の倫理綱領とともに、「無財の七施」の教えを掲載しました。仏保園での保育実践の参考にしてほしいと思います。最後に1つ。子どもは小さい頃から「遊び慣れる」ことが必要だとされているのですが、「時間・空間・仲間」という、いわゆる「3間(さんま)」がなくなってきていると言われます。今後ますます、お寺のように安心して遊べる場所が地域に必要になるのではないかと思います。ご清聴ありがとうございました。(3)第717号

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