2023.09
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乳幼児音楽指導講師日本アタッチメント育児協会育児セラピスト松澤育子先生日常の保育に取り入れやすいリズムあそびていかなければならないことだと思います」と、なかなか事故が無くならない現実を伝え、「どの施設でも『養護』は保育の基盤として重要であり、「からだの安全(生命の保持)+こころの安全(情緒の安定)が守られなければなりません」と話されました。そして、猪熊先生の著書『死を招いた保育』の中で書かれている、2005年8月所事件」について説明されました。この事故では、4歳の男児が本棚の下の引き戸の中に入り込み、熱中症で死亡。高さ35・5㎝、奥行き39・5㎝、横幅42㎝という本当に小さなスペースで起きた事故でした。発見までに1時間半経っており、体温は42℃を超えていたそうです。「裁判で本当に4歳の子が入れるかどうか実験が行われましたが、中に入ると数分で体温が38・2℃に上がり、すぐに中止したけれども夜には38・4℃に上がりました。こうしたほんの短かい時間でも熱中症になるのに、まして1時間半も入っていたら、心肺停止状態になり本当に苦しかっただろうなと思います」。この本棚の下のスペースに園児が入り込んで遊んでいることを、実は8人の保育者が知っていました。この園は、保育者や保護者の仲が悪く、園長先生を無視するという逆パワハラのようなことも行われていたそうです。大人も子どもも人間関係ができておらず、日常の保育の中で子どもに適切な関わりができていない園で起こった事故でした。 「見失い+αが重大事故を招く」と猪熊先生は言います。上尾の事故以外にも、「見失い」に別の条件が重なり、重大事故になった事例が何度も起きているのです。2018年、園外保育で墓石の下敷きになって死亡。2022年、園を抜け出し川で溺れて死      亡。そして、同年に静岡県牧之原市で起きた、園バスに置き去りにされた子どもが熱中症によって死亡した事故もそうです。見失いを防ぐためには、人数確認のマニュアルをしっかり決めることが大切だと猪熊先生。園バス置き去り事故では、添乗者が全員のカードを集めてまとめて機械に通してしまったそうですから、ICTのシステムに頼り切らず、職員が目視+指さしで確実に行わなければなりません。「事故に関わった人たちは苦しみ続けます。保育者の一生を守るためにも、こうした事故を無くさなければ」。保育中に危険な場面としては、食事・睡眠・水遊び(=くう・ねる・みずあそび)が代表的です。また、危険な場所については、園内の見取り図を作り、職員全員で危険箇所のあぶり出しをすることを猪熊先生は勧めています。そして、「あれもこれもやっちゃダメ」とソフト(関わり方やルールなど)を変えるよりも、危険箇所のハード(置き場や形状など)を変えることが大切だと説きます。上尾保育所事件後、製品から引き戸は無くなりました。「子どもの息が止まって4分で重篤な状態に陥るといわれていますが、現実は救急車を呼ぶまでに4分経ってしまっていたということがほとんど。保育者の仕事は、医療者のようになることではなく、事故が起こらないようにすることです」。 「保育中の重大事故は、誰か一人のミスで起きるわけではありません。多くの保育者のミスが重なることで、事故は起こります。日頃どのような保育をしているか、そして、園での人間関係、つまり"人と人とのつながり"が事故を防ぐことにつながるのです」と講演を結ばれました。松澤先生の講義は、リズムあそびの実技です。会場の机とイスを片付け、広いスペースを使って身体を大きく動かしました。最初に、アシスタントの増田有希先生による体幹を使った運動遊び。列をつくってトンネルくぐりをしたり、先生の動きに合わせ受講者全員で全身運動を行いました。次は、「リトミックの即時反応」。松澤先生の軽やかなピアノの音に合わせて、手拍子しながら頭や鼻を触るなど1つずつ動きを増やしていきます。猪熊先生講義リトミックの即時反応増田有希先生令和5年9月1日発行10日に起きた事故「上尾保育第710号(6)

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