2023.09
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学校法人真理学園理事長公社・日本仏教保育協会研究委員会委員長駒沢女子短期大学教授友松浩志先生猪熊弘子先生仏さまの教えと生きること不適切な保育を防ぎ子どもの命を守るために必要なことから、ここではできるだけシンプルに仏教と仏教保育の話をしようと思います」と前置きされました。続けて、まず約2500年前にお釈迦様という実在の人物がインドに生まれ、出家し修行を経てお悟りを開かれた(成道)という仏教の始まり。そして、誰にとってもたった一つしかない大切な「いのち」が相互に関わり合って存在しているという教えなど、仏教の基本をお話しされました。その上で、「仏教について理解したことを実際の保育に落とし込まなければ仏教保育の実践とはいえず、どのようにして保育に生かすかを考えてほしい」と、仏教保育者としての自覚を持つよう促しました。さらに、「手を合わせて拝むことは大事ですが、それだけが仏教保育ということではありません。私のいのちは大事、あなたのいのちも大事。そういうことを子どもと共に考えることも、仏教保育の実践です。いのちの大事さを知っている保育者は、子どもにあたたかい言葉で接し、前向きな心を育むことができるでしょう。そのように、仏教によって皆さんの保育がより良いものになることを期待しています」と話されました。そして、「自己肯定感や子ど         今、仏教保育は幼児教育・保もの人権が重要視されている育の分野で広く貢献できる大きな可能性を持っているのです」と締めくくられました。友松先生は、近年まで東京都私立幼稚園連合会の会長を務めていました。講義は、「仏さまの教え」と「生きること」、それから「仏さまの教えと(=wと」という二つの意味でのお話です。まず仏教徒にとって一番大事な言葉である「三帰(依)」について。「仏」は仏様そのもの、「法」は仏様の教え、「僧」は仏様を信ずる人々。また、「南無」は当て字であり、「帰依する」という意ith)生きるこ味。「三宝に帰依する」というのは、国の違いや宗派にかかわらず、どんな仏教徒にも欠かせない大切な教えです。さらに、お釈迦様が亡くなった時、火葬された遺骨が埋葬されたことから塔信仰が生まれたことや、阿弥陀仏についてふれ、限りあるいのちの尊さを示唆されました。ここで一つの曲が会場に流され、受講生たちは最後まで聴き入っていました。紹介されたのは、木村弓さんが歌う、映画『千と千尋の神隠し』の主題歌「いつも何度でも」。とても感動的な曲で、安倍元総理の国葬でも使われ、海外の子どもたちが教会で歌うほど、世界中に知られています。シュタイナー教育で使われる竪琴「ライアー」の音色が特徴的です。その歌詞は宗教的な内容も含んでいます。「かなしみは数えきれないけれどその向こうできっとあなたに会える」「生きている不思議死んでいく不思議」。生きることは死ぬことと対極にあるのではなく、1つの輪の中にあって、その中でいのちはつながり合いながらぐるぐる回っているという、インドの重要な生命観「輪廻転生」。生死一如。そんな意味合いが込められている気がすると、友松先生は話されます。続いて、金子みすゞの詩を朗読。金子みすゞは、大正初期に亡くなりましたが、70年代頃から再評価され脚光を浴びた童謡詩人です。次に、「法句経」。詩のような形態で口伝えされた初期のお経ですが、この法句経の訳は、天才的な語学力を持っていたという友松先生の祖父によるものだそうです。その一編を紹介します。  五十(法句経)他人(ひと)の邪曲(よこしま)を観るなかれ他人のこれを作(な)しかれの何を作さざるを観るなかれただおのれの何を作し何を作さざりしを想うべし 「我々は仏さまの教えとともに生き、生かされています。皆さんには、仏教を土台にして、自らのいのちを生き、生かし、子どもたちと一緒に、そのいのちを輝かせてほしいと願って、お話しさせていただきました」と締めくくられました。まず導入として、「私は記者として、22年間ずっと保育の事故を取材し、『どうすれば事故を防げるのか』を考え続けてきました。本当に皆で考えて無くすことに力を入れ友松先生講義(5)第710号令和5年9月1日発行

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