2023.09
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園に担ってほしい役割試案の基本理念は3つです。①若い世代の所得を増やす②社会全体の構造・意識を変える③全ての子育て世帯を切れ目なく支援するまず子育てにかかる経済的支援を強化し、それからこども・子育てにやさしい社会づくりのための意識改革。若い人たちが「応援されてるんだな」と安心できるような社会にしましょうということです。その上で、全ての子どもを対象にサービスを拡充、という3本柱になっています。少子化対策は「2030年が分水嶺」といわれています。これからの6〜7年が少子化の傾向を反転できるかどうかのラストチャンスだと。その危機意識をもって、今後3年間で特に力を入れたい「加速化プラン」をまとめています。プランの1つ目が「経済的な支援」。児童手当の拡充や、文部科学省の授業料後払い制度の導入、厚生労働省の子ども医療費の助成といったものです。2つ目が「こども・子育て世帯を対象とするサービスの拡充」。75年ぶりの配置基準改善と更なる処遇改善、「こども誰でも通園制度(仮称)」の創設など。3つ目が「共働き・共育ての推進」。男性の育児休業の取得推進に向け、中小企業への支援強化や時短勤務を選択した場合の給付の創設など。4つ目が「こども・子育てにやさしい社会づくりのための意識改革」。こども家庭庁のもとでスタートする国民運動などです。この小倉大臣の試案を踏まえて「こども未来戦略会議」が立ち上げられ、この春から検討を続けてきました。いま試案をもとに作成された「こども未来戦略方針」が示されており、これが明日にも閣議決定できそうだという状況でして、今日の時点では方針案ということになります。 この方針は試案に肉付けされたものですので、主な所だけ申し上げます。経済的支援の部分で、児童手当の改善点として、所得制限の撤廃、中学生までだったものを高校生まで延長、第3子以降の多子加算3万円の3点。また、「出産・子育て応援交付金」の制度化。それから、幼児教育・保育の部分で、懸案になっている1歳児と4・5歳児の職員配置基準の改善に着手すること。そして、0〜2歳の未就園児を対象とした通園給付「こども誰でも通園制度」の創設。これは「事業」ではなく「給付」として制度を設計することとされています。これが通園給付として制度化                 でモデル事業を行い、具体的な要されれば、家で子育てをしているお母さんが1か月に一定時間そのサービスを使えることになります。ですから、お母さんたちからは期待の声が上がっている一方で、保育現場からはご心配の声をいただいておりまして、今年度と来年度件等をしっかり検討しながら本格的な実施に結びつけていこうと計画しているところです。また、保育の待機児童が3千人を切っている中で、放課後児童クラブの待機児童は約1万5千人。放課後児童クラブの推進が懸案になっており、今年度どこまで整備できるか文部科学省と議論をつめているところです。この方針が正式決定し、これに基づいて来年度以降の予算が編成されれば、次のステップとして必要な財源をどこから捻出するか議論していくということになります。最後の締めくくりとして、今日、私が皆さんにぜひお伝えしたいことをお話しします。これから認定こども園や幼稚園、保育園に担っていただきたい役割についてです。1点目は、質の問題です。これからつくる「育ちの指針」は、子どもが幸せに育っていくための環境整備をしようという指針です。どの施設類型か、在宅か、あるいは認可外かといったことは関係なく、子どもが育つ環境をしっかり議論するものですが、その上で、「幼稚園教育要領」や「保育所保育指針」、「幼保連携型認定こども園教育・保育要領」についても、今後さらに充実していく必要があると思っています。そのために皆さんの日々の実践から助言をいただきたい、というのが1つです。2点目は、子育て支援の拠点機能を担ってほしいということ。教育的な発想と福祉的な要素と、私は両面が必要だと思っております。内閣府で長く認定こども園の制度づくりなどに携わったことで少し脱却できたかなと思いますが、私は厚生労働省出身なので、福祉的な発想になりやすい。厚生労働省の発想はどうしてもレスパイトつまり「親のために子育ての負担を軽減する支援」という発想になりがちです。それはもちろん大事ですが、それだけではいけないと思っています。前述の「こども誰でも通園制度」でも、私が必ず職員に言っているのは、これは親に楽をさせるための支援ではないということ。いまや、お母さんが家で子育てをすれば子どもが幸せというのではなく、マンションの一室で親子が1対1で一日中過ごすとか、むしろそういったご家庭のほうが心配な面があるというような時代になっているわけです。0・1・2歳の育ちをしっかり支えるためにも、同じ年代の子と交流をもち五感に対する適切な刺激を受けることは必要だと思いますし、そこに専門家である幼稚園教諭や保育士が関わることによって親をエンパワーする、親をより強くするといった教育的な視点が重要だと思っています。そういった意味で、皆さんの園に子どもの育ちを促すための拠点機能としての役割を担っていただきたいし、そういうことができる大事な社会資源なのだということを社会に訴えていきたいと思っております。3点目ですけれども、先ほどの「こどもまんなかチャート」、その真ん中あたりにいるのは園の先生たちです。それはつまり、目の前にいる保護者と、子どもに関心のない地域の人たちをつなぐ接着剤のような役割を園が担えるのではないかなと。先進的な事例として、子どもたちを見ているうちに地域に目がいくようになって地域の妊婦さんの支援もしているとか、園を卒業したあとの子どもたちが心配になって学童保育や小学校との連携に力を入れるようになったとか、そういったお話をよく聞いています。すでに園が街づくりの拠点になるという観点でいろいろな取り組みが広がっていますし、今まで子どもに関心のなかった人たちを地域の中で巻き込んでいくようなこともできたらと思います。円滑な園運営のため、こども家庭庁としても環境整備を進めていけるよう努力してまいります。皆さんにもぜひご支援いただければと思っております。ご清聴ありがとうございました。※本記事中の情報は研修会開催日時点のものです。(3)第710号令和5年9月1日発行

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