「こども大綱」「育ちの指針」保育士の処遇・配置改善こども・子育て政策の強化園という施設類型を問わず充実を図っていくことが重要です。保育・教育の内容にかかる基準については、文部科学省とこども家庭庁が相互に協議し、共同で策定して告知を出すことが法律上規定されています。すなわち、学びにかかる行政と育ちにかかる行政とが、それぞれ専門性を高めながら相互に連携し、質と量の両面でしっかりと施策を進めていくことになります。こども家庭庁の施策の主なスケジュールとして、秋頃には、こども政策に関する大綱をまとめた「こども大綱」が閣議決定される予定です。特に皆さんに関わるものとしては、「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針(仮称)」(以下、育ちの指針)がございます。この基本指針がどうあるべきか、同審議会での正式な検討の前に、昨年度、有識者の懇談会において論点が整理されました。その報告において、幼児期は子どもの生涯にわたる幸福(ウェルビーイング)の基礎を培い、人生の確かなスタートを切るために最も重要な時期。だからこそ、「子どもと日常的に関わる機会がない人とも理念を共有したい」とされています。どういう人たちと共有すればいいのかを整理したのが「こどもまんなかチャート」です。子どもから見て一番近くにいるのが保護者や養育者、その周りを取り囲んでいるのが直接接する保育者などの専門職、さらに教育・保育施設の運営者など「こどもを見守る人」、近所の人など「地域社会を構成する人」、そして一番外側 の円が「社会全体の環境をつくる人」。こういった人たちにそれぞれの立場から指針を共有し理解してもらうことが、ひいては、こどもまんなか社会の実現に資することになります。この「育ちの指針」は、「こども大綱」と連携するかたちで、しっかりと議論を進めていくことになっております。続いて、保育士の処遇改善について。これまでも随時の処遇改善を行ってきましたが、今後は公定価格で費用の「見える化」を進めることも求められています。実際、更なる処遇改善を財務当局と調整していくためには、人件費に振り向ける費用だということをしっかりと示していかなければなりません。また、保育士の配置改善については、これまでも3歳児の配置改善など鋭意行ってまいりましたが、残念ながら1歳児(6対1を5対1に)、4・5歳児(30対1を25対1に)のところで、実現にこぎつけていない宿題事項です。なお、ささやかではありますが、令和5年度においても、保育士の加配加算など若干の改善を行っております。次に、送迎バスに関する安全管理について。令和4年に送迎用バスに園児が置き去りにされて亡くなるという痛ましい事案が発生したことを受け、各種の対策を講じています。乗降時の点呼等による所在確認と安全装置の設置を義務化、また安全装置の仕様に関するガイドラインおよび安全管理マニュアルを作成しました。これらはともに補正予算を確保し、安全装置の導入等の財政支援について盛り込んだところです。こうした保育所等における不適切事案は、昨年来、様々な報道が個別に出てきております。一方で、我々としては、多くの園では子どもの日々の成長に寄り添って適切な保育を担っていただいていることに大変感謝しております。虐待があってはならないのはもちろんですが、園の皆さんが必要以上に萎縮してしまわないことも重要な観点だと思っております。そういった観点からの対策により虐待などを未然に防止すること、また保育の現場の中で実践と振り返りを積み重ねていただくことを支援していきたいと考えております。ところで、保育所の待機児童は3千人弱まで減った一方で、定員充足率については保育所も少しずつ減少しており、やはり人口減少等の影響がこれから出てくるものと思われます。こうした中、就園していない子どもの居場所を整理してみると、0〜2歳はやはり家にいる割合が圧倒的に高い。今後、こういった小さいお子さんの在宅育児の支援が非常に重要になってくると思っております。続いて、「こども・子育て政策の強化」の方針についてご説明します。段階を追ってお話ししますと、今年3月末に子ども担当の小倉大臣(小倉將信内閣府特命担当大臣)が試案を発表しました。このそれぞれのこどもから見た「こどもまんなかチャート」の視点のイメージ出典:内閣官房「就学前のこどもの育ちに係る基本的な指針」に関する有識者懇談会 報告~基本的な指針(仮称)の策定に向けた論点整理~https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo_sodachi_yushiki/pdf/houkoku.pdf令和5年9月1日発行第710号(2)
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