虐待・不適切な保育を防ぐ残念なことに、昨年末頃より、不適切保育に関する報道が止みません。静岡県裾野市の保育所において不適切な保育が行われていたという事案の発生を契機として、富山県富山市の認定こども園、宮城県仙台市の企業主導型保育施設……と、全国で相次いで報告されています。これを受けて厚生労働省および内閣府は、昨年12月7日、「保育所等における虐待等に関する対応について」という文書を出し、各都道府県・市町村等において、その内容を域内の保育所等(=保育所、地域型保育事業所、認可外保育施設、認定こども園)に周知することとしました。保育所等には、改めて虐待の発生防止を徹底することが求められています。その際、初めは虐待ではなく、少し気になりつつも見過ごされてしまうような「不適切な保育」であっても、それが繰り返されていくうちに問題が深刻化し、虐待につながっていくこともあり得るため、早い段階で改善を促し、虐待を未然に防止することが重要です。この文書では、保育のあり方を点検するために、次の2点が活用できるとしています。①不適切な保育の未然防止及び発生時の対応についての手引き(厚生労働省)②保育所・認定こども園等における人権擁護のためのセルフチェックリスト(全国保育士会)①「手引き」には不適切な保育の行為類型が示されており、②「チェックリスト」において、その具体的な事例をみることができます。なお、幼稚園等における不適切な教育・保育に関する対応については、翌12月8日、文部科学省より「幼稚園及び特別支援学校幼稚部における不適切な保育に関する対応について」という同等の文書が出されています。4月の新年度を迎えました。どの園でも新入園児を迎え慌ただしい毎日がスタートします。昨年度は残念ながら、各地で不適切な保育の事実が報道されるなど保育者と園の資質が大きく問われることになりました。先日、とある新聞に掲載された記事に目がとまりました。退職間際のある校長先生の話で、出勤前には「今日一日平安でありますように」とご先祖さまに手を合わせ、神仏にすがるような気持ちで毎日を過ごしていたとありました。いつ呼び出しの電話が鳴るか分からない、次から次へと問題が持ち込まれる校長先生の隠れた気苦労がうかがわれます。子どもたちの笑顔に癒される場面は多いですが、保育の仕事ももちろんそれだけではありません。子どものけんかや保護者とのやり取り、職場の人間関係など現場においてもいろんな問題が起こることは日常茶飯事です。保育者は無意識に子どもが嫌がる行動や、人権を尊重しない行動を取っていないか常に意識している必要があります。職員室の雰囲気はどうでしょうか。日々の緊張感が職員の負担につながり、何かにすがるような余裕のなさが生じていないか、環境が大きく変わる新年度、子どもの目がない場所での職員のふとした様子を見逃さないよう、よく気を配りたいところです。健全な保育のために、保育者が余裕を持って子どもと向き合える様に工夫していくこともますます大切になっていると思います。3/6 「仏カリ」「仏教保育」編集会議 事務局会議(WEB会議)(桑田)事務局 日誌令和5年4月1日発行 第705号(8)
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