202304
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「見失い」が重大事故の誘因重大事故を防ぐために に入って遊んでいることを8人もの先生が知っていました。保育者同士の仲が悪く、知っていても変えようとしなかったんです。また、この本棚のあったところは日が入らず、暗いので本棚を置かないようにと市から言われていたのに、置いてしまっていました。裁判の中では、「日常の保育に多くの問題があり、その問題を放置した故に起きた、起こるべくして起きた事故である」と言われました。ずっと取材してきた私が思うに、これはどの事故でも同じ。やはり「日常の保育」を大切にすることが重要なのだと思います。Yくんのことを言いに来る子はいませんでした。これは、①保育者や保護者の関係が悪く、子どもたちに互いを思いやる気持ちが育っていなかったこと、②すぐ怒るなど不適切な保育によって子どもたちが大人を信用していなかったこと、この2つの理由があったのではないかと私は推測しています。「何か言えば怒られるんじゃないか」と大人を信用できず、言えなかった……。一人ひとりの子どもが自分の気持ちを安心して表すことができる「こころの安全」は、「からだの安全」に通じる大事なことだと思います。められ、熱中症で亡くなるという事故が幼稚園で起きています。大きく報道され、私も何度も取材に行きました。死因になった熱中症について取り上げられやすいのですが、この事故は子どもの姿を見失ったことによって起こったものです。う1つ大きな条件が重なった時、死亡事故などの重大な事故が起こるというのがパターンになっています。先ほど話した『死を招いた保育』の事故がその1つ。歳の子どもがお墓の下敷きになって亡くなっています。その死因は倒れた墓石にぶつかったことではなく、130kgほ加えて、4歳児クラスの園児の誰も、昨年9月に、子どもが園バスに閉じ込このように「見失い」にプラスαでもまた、2018年には、園外保育で4どの古い墓石の重みでした。すぐその場で助け起こされていたら、命は落とさなかったと思います。救出後、3日ほどで亡くなったそうです。昨年4月には、5歳の子どもが公立保育園を抜け出し、近くの川で溺れて亡くなっているのが発見されました。療育に通っている障がいのある園児でした。このように、「見失い」は大きな事故を引き起こします。置き去りや見失いをなくすために、子どもの人数確認については、ぜひ各園でマニュアル化してください。頭数が分かればいいのか、名前まで確認するのか、どういう時にどういう数え方をするのかという手順を定めて共有しましょう。子どもは、窒息などで呼吸が止まってから重篤な状態になるまで、わずか4分しかありません。4分で助けて蘇生率が給されないと後遺症が残る可能性があるので、この3~4分が境目となります。このことを考えても、事故が起きたら、もう助けられない可能性が高い。「事故を起こさないための取り組み」が何より大切です。子どものせいにしてしまったり、子どもはケガをするものと片付けてしまわないで、保育者が自分の常識を疑い、「どうすればよいか」を考えないと、事故やケガはなくなりません。まず、事故やケガを記録する事故簿のようなものを作ること。子どもが「治療に30日以上かかるケガ」をした時は、自治体を通して内閣府に報告する義務があります。これを「重大事故」と考え、「病院に行く/行かない」「ヒヤリハット」のように、程度によって分類し、記録します。園内研修としてやっていただきたいのは、園舎や園庭、よく行く場所の全てに見取り図を作り、職員全員で「どこが危ないか」をあぶり出して共有すること。それぞれ「嫌だな」と思うところに、ふせんを貼っていくと良いでしょう。こうやって全員で問題を共有することで、頭が整理されます。問題があると感じたところは、ハードとソフトを変えるようにしましょう。ハードは環境、ソフトは人の関わり方やルールなど。より重視するのはハードです。例えば、子どもは「走るな」と言われても走りますが、見通しが良くなければ走らないし、走ってもケガをしないような環境にすることもできます。死亡事故の典型的なパターンを知ることも、重大な事故を防ぐことにつながります。保育中、最も危険な場面と年齢は、睡眠中の0~1歳、食事中の1~2歳以上、水遊び中の3歳以上。これにプラスするなら外遊びのお散歩なので、「くう、ねる、みずあそび、おさんぽ」と覚えてもらっています。また、無理に寝かせる、無理に食べさせる、発達を無視して活動する……そういった「子どもに対する不適切な保育」が重大な事故につながる場面も多いです。3年程前にも、1歳2か月の子が無理に食べさせられたリンゴを喉に詰まら全部で8人もの先生がこの引き戸の中に子どもが入って遊んでいることを知っていた!職員関係の悪さなどから共有できず、この部分の危険を変えることができなかった。本棚は三角倉庫で日が遮られた暗い廊下にあった子どもが亡くなった本棚本件本棚令和5年4月1日発行              50%。あわせて、脳に酸素が3分以上供第705号(2)

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