実はこれ以上あると信じます」「かなり報告洩れが多い」「確然とした統計は困難」「とにかく不完全な調査」などと吐露しているように、堀自身が、当時の仏教園の数を正確に表した調査でないことを認めているのです。しかしながら、今日でも仏教園全体の正確な実態調査が難しい状況で、宗派横断的に調査を実施したこと自体に価値があることは確かです。それに、当時の仏教園の最小限の数を示していると考えても差し支えないとまで言明しています。そのため、この調査が実施された時期が協会の設立当初であったことからも、当時の各宗派における理事と仏教園の数を比較することで、一つの傾向を捉えることが可能だと考えられます。調査表を見てみますと、各種別の仏教園数を合計した数が最も多い宗派は浄土宗で、これに曹洞宗、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派、が続いています。次に、臨時の農繁託児所を除いた常設である幼稚園と託児所だけを合計してみますと、最も数が多い宗派は浄土真宗本願寺派で、これに浄土宗、真宗大谷派、曹洞宗、が続いています。さらに、農繁託児所だけは異なるのですが、幼稚園と常設託児所をそれぞれ単独で比較しても、順番の前後はあっても、各宗派における各種別の仏教園数の合計と同様に、いずれの上位4宗派も同じであることがわかります。先の調査表は、正確であるとは言えないかもしれませんが、これを前提としても、種別の組み合わせをいくつか変えた比較において、協会に関係する半数の宗派が同じであることから、これらの4宗派は、他の宗派よりも仏教園数が多い傾向にあったと考えられます。そして、いずれの4宗派も、2名以上が理事を務めていることから、理事における各宗派の人員の割合は、宗派ごとの仏教園数に比例して決まっていたと考えられることから、資金的な支援においても、これが、相対的な金額の多寡につながっていたといえます。つまり、理事という役職は、宗派による万全な支援体制の構築において、協会と各宗派との懸け橋という重要な役割も担っていたと考えられるのです。今回で、「仏教保育協会と各宗派との関係性」についての一連の話題は一区切りとなります。両者のこのような関係性につきましては、このあとも、仏教保育協会保母養成所などの話題の際にも触れますが、通仏教体制の運営や支援のあり方を知る上で、仏教保育協会は、好例で不可欠な存在といえるのです。次回は、「仏教保育協会会則」において、これまで言及できなかった会則の残りの原文を掲載しながら、仏教保育協会の目的や事業などについてお話しします。れている仏教保育夏期講習会(現在の夏期仏教保育講習会)で、1932(昭和7)年に開催の第4回の講習会における各宗派からの寄付額は、芳名順に、50円(現在の約5万1000円)が、浄土宗務所、曹洞宗務所、真宗本派本願寺執行所、真宗大谷派本願寺執行所、30円(現在の約1000円)が、日蓮宗務院、天台宗務庁、真言宗豊山派宗務所、真言宗智山派宗務所、となっています。翌年の1933(昭和8)年に開催の第5回の講習会でも、50円の4宗派は同じで、30円では、天台宗の宗派名を確認できませんが、他の宗派に変化はありません。また、仏教保育夏期講習会の総収入について、第5回を例に見てみますと、約823円(現在の約助金」は290円(現在の約26万円)で、全体のおよそ35%もの割合を占めていただけでなく、「講習会会員会費120名分」の240円(現在の約22万円)よりも多い金額を支援していたのです。このような各宗派による資金的な支援は、毎年度の予算はもとより、夏期講習会といった定期的に開催される行事などでも、全体の収入において大きな割合を占めていたことから、仏教保育協会は、各宗派による支援が大きな支えになっていたと言っても過言ではなかったのです。計計 全国仏教主義幼稚園託児所調査表堀によれば、この調査は、1930(昭和5)年度末現在の各宗派におけるの幼稚園や常設託児所、農繁託児所の全国的な仏教園数(堀の言葉を借りれば「仏教保育事業団体数」)を一覧にまとめたものです。この調査表は、これまでも、当時の仏教園の状況について言及する際に、しばしば引用されてきましたが、調査内容について、「事理事が担っていた重要な役割とは各宗派による支援の実態を見てきましたが、仏教保育夏期講習会に関しては、宗派ごとの資金的な支援内容までを確認できます。金額としては、50円と30円のいずれ3万かですが、このような違いがあるのは、なぜでしょうか。これは端的に言えば、理事に占める各宗派の割合によるものと考えられます。前号で紹介した理事における宗派ごとの人数について、先の第4回仏教保育夏期講習会で記載した宗派の順番を参考に記しますと、次のようになります。3名(曹洞宗、真宗大谷派)2名(浄土宗、浄土真宗本願寺派、日蓮宗)1名(天台宗、真言宗豊山派、真言宗智山派)これは、理事全体における各宗派の人数の割合を表したもので、宗派選出の具体的な人数は明らかではありませんが、複数名が理事を務めている宗派は、支援額も多い傾向にあることがわかります。つまり、宗派によって支援する金額は、理事として務めている宗派ごとの人数の割合によって決まっていたと考えられるのです。それでは、なぜ、宗派によって理事を務める人数に違いがあるのでしょうか。それを紐解く手掛かりとなるのが、堀緑羊が実施した次のような調査です。〔備考〕右表は、昭和5年度末現在(多18332121251725111681475474375568143289少の相違はあるが)の調査で、各宗派よりの報告に基いて作製した概数です。事実はこれ以上あると信じますが、かなり困難です。とにかく不完全な調査とはい報告洩れが多いので、確然とした統計はえ、仏教保育事業団体数の最少ママ限度を示したものと見て差支ないと思います。(『理想の仏教保育』)宗派別 天台宗古義真言宗新義真言宗浄土宗臨済宗曹洞宗真宗 本派真宗 大派その他真宗各派日蓮宗宗時種 別幼稚園常設託児所農繁託児所253491191384192637434374万円)のうち、「各宗宗務所補345619205211481199913268748(3)第701号令和4年12月1日発行
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