「発達障害」への理解を深める編集後記 (桑田)6月に発表された厚生労働省の「人口動態統計」によると2021年の出生数は概数で₈1・2万人となったと報道がされていました。2000年には約119万人だった出生数が、2020年には約₈4万人まで低下、22年度中には₈0万人を割り込むことが確実視されています。政府予測では出生数が₈0万人を割り込むのは2033年と予想されていましたが11年も早いスピードで少子化が進行していることを意味しています。保育業界においては「未来を担う子どもたちのために!」というようなスローガンのようなことをよく耳にします。保育者としての自覚に共感すると同時に少し釈然としない気持ちになることがあります。「未来を担う子どもたち」という表現は、ともすると「社会を引き継いでくれる担い手だから大切で尊い存在なのだ」と受け取れるようにも思います。将来を担う大切な存在である以前に今、この時のありのままの子どもたちの姿に無条件に愛おしさを感じる心を忘れるわけにはいきません。「この子どもたちを守り抜くために」という視点で日々の保育にあたり、現状に応じた保育のあり方を模索することを大切にしたいものです。出生数が低下しても子どもがいなくなることはけっしてありません。子どもが未来に向けて輝かしい希望がもてるような社会のあり方が求められているように思います。「発達障害」という言葉は、年々、日常生活の中でも耳にするようになりました。TVの特集番組や、著名人が「自分もそう診断された」「検査によってその傾向にあることが分かった」など、「我が事」としての発信を目にする機会も増えています。厚生労働省では、発達障害を「生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態」と説明しています。脳の働き方に「違い」があることで生じる生まれつきの特性で、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習症(学習障害=LD)、チック症、吃音など、その特性の現れ方にはさまざまです。情緒面や行動面に表れる状態が、一般的な理解の成長に伴う発達と違うため、幼児期においては家庭での育児の悩み、成長した本人にとっても集団生活や社会生活において「生きづらさ」を感じる原因となっています。2005年に施行された発達障害支援法では、その目的を「早期発見とそれに伴う早期支援の体制を地方自治体に推進させる」としています。乳幼児期の発見は難しさを伴うものの、できるだけ早期に発見し療育や支援を行うことが、後の「つらさ」「困る」などの感じ方が変わってくると言われています。表れる特性は一人ひとり違うため、その特性に合わせたサポートが必要です。できないことを責めず、少しずつでもできることを一緒に喜ぶ。そうした支援には、周囲の人びとの発達障害に対する理解が欠かせません。発達障害は、大人になってからの診断で分かることもあります。誰もが「我が事」として理解を深めることが、社会の「生きづらさ」を減らす1歩となるはずです。http://www.buppo.com/仏教保育綱領慈心不殺 生命尊重の保育を行なおう仏道成就 正しきを見て絶えず進む保育を行なおう正業精進 よき社会人をつくる保育を行なおう令和4年9月1日発行事務局日誌〒105-0011 東京都港区芝公園4-7-4TEL 03(3431)7475・FAX 03(3431)1519発行人 髙山久照 編集人 桑田則行毎月1回1日発行 (1部300円税込)第698号(8)公益社団法人 日本仏教保育協会
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