2021-2022
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  自己肯定感と心の安定公益社団法人日本仏教保育協会は、「令和3年度仏教保育研修会」としてオンライン研修を配信しました。水野智美先生の配信された講義内容の概要を紹介します。見えないものが見える子と試し行動をする子私の自閉症スペクトラム傾向「保育の場における支援の必要な子ども、令和3年度仏教保育研修会講師水野智美先生(筑波大学医学医療系准教授)オンライン保護者への具体的な対応」主催:(公社)日本仏教保育協会Aくんは、幼稚園のホールで遊んでいた時におじさんがいることに気づき、保育者にそのことを伝えた。しかし、そこには誰もおらず、保育者が「ウソはだめだよ」と注意すると、他の子たちが「Aくんはウソつき」と、からかうようになった。それからAくんは口数が少なくなり、あまり話をしなくなってしまった。日本仏教保育協会の皆様、はじめまして。私の実家は幼稚園を経営しておりまして、子どもの頃から保育者に囲まれて生活してきましたので、特にいまこのコロナ禍で先生たちがどんなに大変か、よく分かっているつもりです。今日のお話を聞いていただいて、ちょっとの技術や知識で先手を打って対応していくことで、先生たちが少しでもラクになればと思っています。まずは、子どもの心の安定のための基本についてお話させていただきます。当たり前のことかもしれませんが、「ほめたり、うなずいたりする」ことは、とても大切です。そのほか、「愛情を口に出して伝える」「スキンシップをはかる」「安心できる物をお守りとして持たせる」「子どもの気持ちをしっかりと受けとめる」なども心の安定につながります。皆さん、子どもがうまく言えない時は、「どうしたいの?」「何がイヤなの?」と、その子の気持ちをよく聞くようにされているのではないでしょうか。ただ、保育の場には、また別の支援が必要な子どもたちもいます。ここでは、発達障害傾向のある子たちへの対応についてお話したいと思います。特にADHDの子に「なんで」「どうして」と先生が聞き出そうとすると、叱られないために、他の子がやったなどと言い逃れをしてしまうことがあります。こういう子に対しては、気持ちを受けとめるというのはちょっと脇において、「これはやりません」(×[バツ]のジェスチャー)と、やってはいけない行動をはっきり示すことが大切です。また、自己肯定感が低い子には特に気をつけてもらいたいなと思「どうせやってもうまくいかないいます。自己肯定感が低い子は、から」とひねくれて、何事につけても前向きにチャレンジしていけなくなってしまいます。「ほめる」と「叱る」は、その子が良い・悪いの区別をつけるために、どちらも必要です。ただし、必ず「叱る」よりも「ほめる」が多くなること。叱ることが多いと自己肯定感が低くなってしまいますので、他の子を叩いてしまう子なら「最近は叩いていないね」「我慢できたね」というように、たくさんほめてあげてください。次にお話するのは、「大人には見えないものがその子には見えてしまう」というケースです。実は、このような相談を受けることはよくあります。この場合、先生の多くは、大人の気を引きたくてウソをついているのではないかと考えますが、そうではありません。大人の気を引くために良くない行動をとることを「お試し行動」といい、この行動をとる子は、日常生活のいろいろな場面で気を引くようなことをします。ですから、見えないものを見えると言っただけでは当てはまりません。本人には本当に見えているのです。「見たものを口に出してはいけないの…?」と思うようになってしまうと、その子とのコミュニケーションは大変難しくなります。見えないものが見える子への対応としては、「あなたにはそう見えたのね」と、否定も、変に話に乗ったりもせず、ただ聴いて受けとめるという姿勢が大切です。発達障害傾向の子に対しても、先生たちにとって「なんでそうなんだろう」という場面の連続になってしまうと思いますが、理解はできなくても、「そういう特性なんだな」と受けとめるようにしていただきたいなと思います。ここからは、発達障害傾向のある子への具体的な対応についてお話していきます。おそらく先生たちがいま一番対応に困られているのが発達障害といわれる子どもたちとの関わりではないでしょうか。まず発達障害のある子はたくさんいます。文部科学省の調査では、小学校1年生で10人に1人くらいの割合です。この割合は少しずつ減っていって、中学校3年生ではいます。それでは大人になったら発達障害は治るのかというと、そういうものではありません。発達障害の特性はずっと続いていくけれども、「こういう時にはこうしたらいい」と少しずつ学習していくので、周りの人には分かりにくくなるというだけなんです。ですから、大人の中にも10人に1人の割合で発達障害傾向のある人がいると考えられています。さて、ここまで話を聞いていただいて、私の特性について、何か感じられたでしょうか?私には「自閉症スペクトラム」の傾向が、とても強くあります。令和4年2月1日発行第691号(6)16人あるいは17人に1人となって

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