2021-2022
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  33333はじめに仏教保育協会の創立は1928(昭和3)年7月ではなかったのか―戦前編「仏教保育協会の立ち上げに携わった関係者の存在」―《日仏保の歩み⑭》佐藤成道 淑徳大学アジア国際社会福祉研究所リサーチ・フェロー/曹洞宗常仙寺副住職仏教保育協会は、1928(昭和3)年10月14日(日)、御大典記念事業として東大仏青会館で開催された「発会式」によって、正式な創立を迎えました。年1月に協会の事務所が、当時そして、1929(昭和4)の本郷区(現在の文京区)の吉祥寺の境内にあった栴檀幼稚園に移転してから、本格的に事業が開始されました。確かに、1928(昭和3)年9月には、東大仏青会館で「相談会」が行われていたようですが、この前後に同じような仏教保育の事業が行われていた様子が見受けられないことから、この年には事業があまり行われていなかった可能性が高いと考えられます。そのため、仏教保育協会の対外的な最初の事業としては、1929(昭和4)年1月29日(火)午後2時から、当時の小石川区(現在の文京区)にある護国寺の音羽幼稚園で、仏教保育協会の副会長である関寛之が講師となって行われた「幼児保育」に関する研究会だといえます。写真①は「登園」の様子で、主音羽幼稚園は「真言宗豊山派大本山護国寺」境内にあって、1925(大正14)年に創立されましたが、当時の様子が窺える2枚の写真をご覧ください。和7)年3月の「保育修了記念」これらの写真は、1932(昭の冊子に掲載されたものです。事や保母の先生が子どもたちを出迎えているところが、写真②は「入園式」の様子で、園長先生が演台を前にお話をしているところが写されています。写真が撮られた時期はわかりませんが、1929(昭和4)年1月に、仏教保育協会が事業を開始した当時の様子が、その会場となっていたであろう講堂や、副会長の関寛之が研究会や研究発表を行った際に前にして立っていたであろう演台などから偲ばれます。ところで、前回の10月号(第687号)に掲載した新聞記事では、事業の開始とともに1928(昭和3)年10月の発会式によって仏教保育協会が誕生したことが書かれていました。しかし、当初は同年7月に、「仏教保育協会生る」と題した新聞記事で、「仏教保育協会が創立された」と明記していたはずですが、このことをどのように考えればよいのでしょうか。本年の1月号(第678号)で、「仏教保育協会生る」と題した新聞記事を掲載して、仏教保育協会は1928(昭和3)年7月に創立され、当時の東京府南■飾郡(現在の墨田区)にあった玉井閣に最初の事務所が開設されたことをお話ししました。しかし、協会が正式に創立したのは、およそ3ヶ月後の同年10月でした。当時の協会役員は異口同音に、協会の創立は御大典記念事業によるものと言明していたことから、同年10月14日(日)に御大典記念事業として行われた発会式によって、仏教保育協会が正式に創立したと認められるのです。しかし、2つの記事が掲載された間隔が半年しか空いておらず、創立を重複して表明した理由は定かではありません。確かに、はじめて「仏教保育」の名を冠した事務所が同年7月に開設されたことは事実です。それでも、発会式を「誕生」と明言していた新聞記事や、仏教保育協会が御大典記念事業として行われた発会式を「創立」としていることなどを勘案すれば、同年7月を正式な創立と認めることは難しくなります。ところで、「御大典記念事業」と表明していることから、仏教保育協会を創立させたこと自体が仏教保育の事業だとの指摘があるかもしれません。しかし、これまで言及してきた「事業」とは、協会が組織として行う事業のことです。さらに、「仏教保育」という名称は、仏教保育協会という組織を創設するために登場した言葉でもありました。当時は、仏教保育の事業といえば、仏教保育協会が展開する事業と一体的写真①「登園」写真②「入園式」令和3年11月1日発行第688号(4)

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