保育実践の中にあるSDGs・ESDESDの観点からみた保育者の課題R 指針では「環境」の領域の中に新しい内容が追加されました。「環境」の6番目「我が国や地域社会における様々な文化や伝統に親しむ」です。文化的アイデンティティーを育むことは、国際理解・多文化の尊重、平和な社会の構築につながっていくことと思います。(図6)発想力や行動力を育み、未来社会の担い手を育てる教育がESDなので、幼児教育・保育においても「どのように学ぶか」が大事にされなければなりません。簡単にいえば、①「生活」を基盤として、②主体的活動としての「遊び」を中心に、③環境を通しての保育、④自然とのかかわりを重視し、⑤家庭や地域との連携を図り、⑥保育者自身の意識が重要、というようなことです。今日は概要のお話ですから、この詳しい内容については、またどこかでお話する機会をもてればと思っています。それでは、保育実践の中にあるSDGs・ESDを見ていきましょう。事例を紹介することで、先生方ご自身の振り返りにつながればと思います。1つ目は、瀬戸内海の島の幼稚園で起きた「金魚の三枚おろし事件」。ある日、飼っていた金魚が死んでしまいました。先生が園庭でしゃがみこんでいる子どもたちに近づいてみると、金魚をままごとのまな板に乗せて、包丁でおろしていたのでした。子どもたちは「先生、ぼくら料理しようるんよ」と言いました。島に船で通勤している先生は、「金魚が死んだらお墓をつくる」というのは自分の発想であって、この島の子どもたちにとって魚はもっと身近なものなのだと、改めて気づかされたといいます。「遊び」は普段の「生活」の再現。遊ぶことも生活することに他なりません。それをきっかけに、漁師さんと園児との交流が始まりました。漁師さんは「ちゃんと焼いて食べて、そしたら供養になるんで」と、子どもたちに教えてくれました。島に「萬魚類供養塔」という、獲った魚を供養する塔が建っていることにも気がつきました。子どもたちが、漁師さんがもってきてくれたタコと一緒にプールに入った時の面白かったこと!2つ目の事例は、千葉の松戸市にある幼稚園の取り組み。ビオトープをつくってホタルを住まわせることを計画し、そのために井戸を掘りました。子どもたちも保護者も来て、井戸を掘ったそうです。「上総掘り(かずさぼり)」という機械を使わない手掘りで、職人の技術を伝える機会にもなりました。このように、地域の歴史を知ったり、環境のことを考えたりして、図書館に展示もしたそうです。最後になりますが、保育者には、どのように幼児教育・保育が持続可能な社会の構築に貢献できるかを考えることが求められています。日本の幼児教育・保育は、すでにESDを内包していることを見てきました。そうであれば、幼児教育・保育におけるESD実践のカギは、保育者自身の意識にあるのではないでしょうか。ESDについて理解する、身近なものからだけではなく「遠くのどこか」という発想をもつ、「今と未来を育てる」という保育のもつ二重課題を理解する、そうしたことが大事だと思います。まさに毎日の保育の全てがSDです。日々の保育実践とESDの概念をつないでいくことを意識してみませんか。私は「継承と創造」という言葉でESDを表現しています。これまでの文化・伝統を継承し、新しい社会を創造していく。そういう行動力、発想を育てることがESDだからです。髙山理事長先生は、仏教保育では「ともいき」、共生という言葉を大事にしてきたと言っておられましたが、この共生も、まさにESDではないでしょうか。先生一人ひとりが、このESDという概念から保育を今一度考えてみていただけたらと思います。例えば、「行事など園全体の取り組みで」「日々の保育の中で」「コロナ禍の取り組みの中で」など、それぞれ考えてみていただければと思います。現在、OMEPでは新しいESDプロジェクト「OMEP 参加してくださる園を募集しています。日本委員会のホームページに詳しいことが書かれていますので、ご連絡いただければ嬉しく思います。これで私の話はおしまいにさせていただきます。どうぞこれからもESDのことを学んでいっていただきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。(第2回配信期間令和3年1月25日10時〜令和3年2月25日ating Scale」を行っており、図6 保育の5領域とESD令和3年5月1日発行17時)第682号(4)
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