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2030年までに達成すべき17の目標子どもの権利遅れがちな日本仏教界の取り組み事例とジャパンSDGsアワードevelopment Goals)*D目2000年の9月に国連ミレニアムサミットで採択された「国連ミレニアム宣言」。そこから策定されたのがSDGsの前身ともいえる「ミレニアム開発標(MDGs:Millennium 童の権利に関する条約)でしょその中には2015年までに達成すべき8つの目標、①貧困・飢餓、②初等教育、③女性、④乳幼児、⑤妊産婦、⑥疾病、⑦環境、⑧連帯、が設定されています。一定の成果を果たしたものの、達成できていないものもあり、目標④、⑤などは未達成、特に地域的にはアフリカでの達成に遅れがあるということです。そして、2015年に、2030年を年限とするSDGsが採択されました。まずゴール1は「貧困をなくそう」。例えば、国連のホームページをみると、世界人口の55%が医療保険や生活保障といった社会保障にアクセスできていません。また、災害による死者のつまり、経済力が命に関わるという状況があるのです。こういった課題の解決に取り組んでいこうとする世界規模の取り組みがSDGsということになります。このほかSDGs以前からの状況として特に皆さんと関係が深いのが、子どもの権利条約(児」です。う。1989年に国連で採択されました。日本は1994年に批准しましたが、実は、国際的にいえば遅れているというか、子どもの権利が本当に守られているかどうか疑問だという指摘が出ています。日本の場合、「子どもは親の言う通りにするべき」というような親子関係のパターナリズムが、まだ根強いのではないでしょうか。アメリカ留学中、子どもがハサミで手を切ってしまったことがあって、すぐに病院に連れていきました。すると、親である私と妻はすぐに病室から出てくれと言われました。通訳の人がついて、子どもと医者が直接話をするのです。もし親の暴力か何かでケガをしたのだとしたら、親が一緒にいては子どもが正直に話せません。また、子どもを1人の独立した人間として扱い、その意思を尊重するためでもあるのでしょう。このように自由に意見を主張し参加するというような部分では、やはり文化的な相違が大きいようです。批准した国は条約の内容を守らなければなりません。ところが、いま日本では児童に対する虐待やネグレクト、また子どもの貧困が問題になってきています。この辺のところを、これから社会、地域、それから私どものような公益法人なり宗教関係者なりが、どのように関わっていけるか、ということが1つの課題になってくるかと思います。宗教法人の公益的な活動の例として、従来から行われている、子ども食堂、一食を捧げる運動、一隅を照らす運動、災害時の支援・協働、太陽光発電の導入、鎮守の杜・植樹運動、諸宗教のネットワーク、それから皆さんの幼児教育、等々があります。実は、それぞれをSDGsに照らしてみると、子ども食堂は「1.貧困をなくそう」、鎮守の杜は「13.気候変動に具体的な対策を」と「15.陸の豊かさも守ろう」、といったように当てはまるものがたくさんあるのです。実際にSDGsに焦点を合わせた活動も、仏教界において様々に行われています。例えば、最初にふれたように、昨年の世界仏教徒大会では「東京宣言」という決議文をつくりまして、SDGsを支援すると宣言しました。また、昨年度末、日本の宗教界もこのSDGsに取り組んでいこうということで、日本宗教連盟を構成する五団体、教派神道連合会、全日本仏教会、日本キリスト教連合会、神社本庁、新日本宗教団体連合会が集ってSDGs講座をもち、勉強会を行っています。こうした中で、皆さんにお勧めしたいのが、内閣府で公募している「ジャパンSDGsアワード」への参加です。一例を紹介しますと、昨年「SDGsパートナーシップ賞」を受賞したのは、そらのまち保育園(鹿児島市)の取り組みで、総菜店併設の保育園をつくることで商店街の往来が増え、プラスの循環が生まれた、というものでした。保育園・幼稚園・お寺でSDGsに取り組み、応募されてみてはいかがでしょうか。どうもご静聴ありがとうございました。      このあと質疑応答の中で『きかんしゃトーマス』のトーマスたちと世界を旅しながらSDGsについて学べる動画のご紹介がありました。戸松先生は、「現場でお子さんや保護者の方たちとSDGsについて考えるにはとてもよいものです。ぜひご活用いただければと思います」と、話を締めくくられました。令和2年4月1日発行90%以上は低・中所得国の人々。第671号(2)

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